キャンプ旅に行こう 2003年の北海道ツーリング旅日記です。
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2003年 北海道ツーリング

8月2日

目が覚めると、雨の雫がぽつぽつと音を立てていた。外へ出てみると濃い霧が立ち込めていた。テントを木の下に張っているので、木の葉から垂れてきた雫がテントやタープに当たっている音だった。

朝食はマルちゃん・ダブルラーメン。麺とスープがひとつの袋に二つづつ入っている袋ラーメンなんだが、もちろん二ついっぺんに食べるわけではなく、ひとつで済ませる。

今日向かったのは、大雪高原温泉。目的は温泉ではなく沼巡りだ。

R273を北上。糠平ダム方面に行く脇道(旧道?)を見つけ、寄り道。ダムの上を通り、糠平湖を見渡せる駐車場を過ぎた所で神社発見。パシコを止めて入って行ってみたら・・・「糠平電源神社」と言う名前の神社だった。検索してみてもヒットしないのでよくわからないのだが、多分ダムを作る時に地鎮の為に作った神社なんだろう。神殿(と言うより、祠の大きな物と言ったほうが良いかも)がポツンとあるだけだった。「電源」という現代的(?)な文字が入っていると、どうも今ひとつ威厳と言うものが感じられないなぁ(^_^;)

国道に戻り、糠平方面に下っていく。

糠平市街地に入る直前に「鉄道資料館」を見つけ、立ち寄ってみる。ここは廃線になってしまった旧国鉄・士幌線の資料を展示してあるところ。鉄道も好きな私にとって興味を引かれたのである。

糠平にある、上士幌町鉄道資料館。開設期間は4月から10月までで、開設期間中の月曜日と祝日が休館日。開館時間は午前9時から午後4時までで、入場料は100円。

敷地内にはかつての車掌車と、糠平ダム建設に伴い線路の移設工事中のトンネル工事落盤事故で亡くなった方々の慰霊碑があります。

ちなみにここは糠平駅の跡地で、旧士幌線の路盤跡も残っています。

会館は九時からと言うことで少し待っていたら、管理人のおばちゃんがやってきて開けてくれた。

中は士幌線の開業から廃線までの歴史、当時使われていた用具などが展示されていた。鉄道が引かれたのは大正時代で、当時は鉄道が重要な移動・輸送手段(他に交通手段は無かったと言っても良い)ということもあって沿線は賑わいを見せたそうだ。しかし物資の輸送手段が車になるにつれて急速に利用者は減り、ついに廃線になってしまったとの事。

鉄道の経営状態を示す指標として、収支係数、つまり「100円稼ぐのにいくら費用がかかったか」というものがある。収支係数が100ならとんとん、100以上なら赤字で100未満なら黒字と言うこと。

で、士幌線は山の中を走るローカル線と言うこともあり当然赤字になる。一番ひどい時(昭和52年との事)には収支係数が22500になってしまっていたらしい。つまり、100円の収入を得るのに22500円かかったと言う計算。これでは廃止対象になってしまうのも仕方が無い。

有料パンフには、旧士幌線のアーチ橋跡の詳細が書かれていたので購入(100円)。大雪に行ってきた帰りに橋巡りをする事にし、親切に説明してくださったおばちゃんにお礼を言って資料館を後にした。

糠平市街地で給油、三国峠を越える。ダイナミックで走りを楽しめる道だ。

さらに北上するが、観光バスの後ろについてしまう。大雪高原への入り口に近づいているので、看板を見落とさないようにする為に追い越さずに少し距離を取るが、看板を見つけると同時にその観光バスも大雪高原への入り口を入った(ーー;)

幸い入ってすぐに停車してくれたのでそのまま追い越し、大雪高原までは10kmのダートを慎重に走る。しかし車が良く通るせいか路面は硬く締まっており順調に大雪高原温泉に到着。

大雪高原温泉のHP → http://business3.plala.or.jp/daisetsu/

大雪高原温泉に向かう道は一見フラットに見えますが、観光バスがよく通るせいか細かい凸凹があって、ロードバイクだと「ズダダダ!」っとハンドルにもろに振動が伝わってきて注意が必要。
大雪高原温泉の、熊に関する情報センターの建物です。

沼巡りコースはこの建物内からしか入ることができないので、ここで受付してから行く事になります。

とりあえず受付で入山届けに記入。すると沼巡り受付の指導員の方曰く・・・

「今日行けるのは大学池までです。大学沼近辺で熊の親子3頭、空沼付近に同じく3頭、その他にも単独行動を含めて6頭の熊が確認されています。そのような訳で、現在右回りコースは行けません。」

と事細かな説明を受ける(^_^;) 思わず熊よけの鈴を1000円出して買ってしまったのでした。

受付を済ませ、歩き始める。すぐ先に沢が流れており、そこに「足洗い場」があった。看板によると、本来生息していないはずの植物が見られるようになってきたからだという。つまり、靴底に付着した植物の種を洗い流す為に設置されている。

やっぱり、元々の生態系を変えてしまうのは人間が一番大きな原因だなと実感。たとえ高山植物を勝手に採取したりゴミを捨てたりしなくても、人が大勢来ると言うだけで簡単に生態系は変わってしまうと言う事。もちろん、私自身もその一人であるわけなんだが・・・。複雑な心境になってしまう。「たとえ自然を勝手に変えて人間が自滅したとしても、それもまた自然の摂理」と言う考え方もあるんだが・・・。人間も自然のごく一部だし。

靴底を洗い、気を取り直して再び歩き始める。遊歩道の両脇には特大サイズの水芭蕉がたくさんある。道は完全な登山道と言った感じで、すれ違う人も本格的な登山の格好をしている。バイク用レインウェアにゴム長靴というバイクに乗るときのままの格好の私は思いっきり浮いている(^_^;)

雨の中ひたすら歩き続ける。右回りコースと左回りコースの分岐点にたどり着いて時点で完全バテバテ状態。ウェアの中は汗でぐしょぐしょに濡れ、メガネは体温で曇り、額から滝のように流れてくる汗が目にしみる。汗をぬぐう為のタオルを持ってくるのを忘れてしまったのが痛い。

必死で2km程を歩き、そこに見えてきたのは雪渓! 8月に雪を見るのは久しぶりだ。

さらに少し歩くと、土俵沼が。このあたりは高層湿原で、沼が無数と言っていいくらい沢山ある。湿原の沼らしく沼の輪郭がはっきりしていない。雨は相変わらず降り続け、沼の表面に無数の波紋を作っている。

さらに先に進み、芭蕉沼・緑の沼・滝見沼を見る。幸い散策する観光客の姿も途切れ静まり返っている。雨の降る中ベンチに腰をおろし、一息ついて大雪の山々を背景にしたこれらの沼にしばし見入る。

遊歩道はこんな感じです。所々に急な階段も。

木道の両側に生えているのは、特大サイズのミズバショウ。木道上の葉っぱは踏みつけられていたりして、内地に比較すると扱いが雑なような気が(^_^;)
沼の近くまで来ると、このように雪渓が残っています。
緑沼から大雪の山々を望む。

晴れていたら、水面に山々が映し出されて美しい景色が見られたでしょう。

さらに先にも行けるのだが、時間的な面はもとより体力的にこれ以上先は無理と判断、高原温泉への帰路に着く。

帰りは来た時より楽は楽だったのだが、団体と遭遇してしまった為にすれ違いに時間がかかってしまった。20人以上の団体がどやどやと登っていった。

先ほどの足洗い場でも団体ツアー客とすれ違ったのだが、誰一人として靴底を洗う人はいなかった。人数が人数だし、時間に追われているからと言うのも分かるんだけど・・・。う〜ん。

高原温泉に戻ってくると、案の定さっきの観光バスが3台も(ーー;) ・・・という事は、沼巡りに行った人数から考えると温泉も混雑している可能性が大きい。いくら汗びっしょりとは言え、イモ洗いのような混雑した温泉に浸かってもねぇ・・・。仕方なく温泉はパスする事とした。とりあえず喉がカラカラなので、自販機のアイソトニックドリンク500mlペットボトル(210円!)を一気飲み。

着ているTシャツが汗でビタビタなので、観光バスの運転手とバスガイドの視線を感じつつ、尻羽岬に続いてまたまた上半身マッパになって着替える(パシコを止めた場所の近くに観光バスが止まっていたのだ)。

再びダートを国道に戻る。だいぶ慣れてきたせいか快調快調。走りを楽しめるくらいになってきた。カーブを抜けたら観光バスと遭遇してビビッたりしつつR273へ。

三国峠のパーキングで一服、糠平湖方面へ。

次の目的はアーチ橋巡り。パンフを見ながら片っ端から・・・と思ったが、よくわからない場所も多く時間的制約もあって、結局撮影できたのは十三の沢橋梁、第六音更川橋梁、そしてタウシュベツ川橋梁。

まずは十三の沢橋梁。鉄道資料館で買ったパンフを見ながら近づく事のできる林道入口を探し、入っていく。少し走ると十字路に出て、そこに「十三の沢橋梁→」という小さな看板を発見、右に曲がる。

その先には、金網が張られていた。奥を見てみると・・・金網の先がまさに十三の沢橋梁上であった。そう、林道と交差している道が士幌線の線路跡そのものだったのだ。

金網越しに橋梁を覗いてみる。かつて線路があった橋梁上は雑草が生えている。昔はここをSLが走り、木材や乗客を運んでいた・・・。

・・・などと考えている時に、付近が熊出没多発地帯である事を思い出した(大汗)。わっせわっせと何度も切り返しながらパシコを方向転換し、国道に戻る。

第六音更川橋梁は国道と並行しているのですぐに分かり、国道の橋の上からパチリ。

十三の沢橋梁です。

パシコの止めてある道がまさに士幌線の線路跡そのもので、反対側(後ろ側)にも線路跡が続いていました。

轍があった事から考えて、保存活動をしている人達の他にも車で来ている人が結構いるようです。
第6音更川橋梁です。

国道の比較的近くを並行してあるので、すぐに見つける事ができます。パンフによると、橋の下にも降りられるみたいです。

タウシュベツ川橋梁に行く林道の入口がよくわからなくて付近を往復してしまったが、小さな看板を無事発見、林道に入る。橋までは3〜4kmダートなのだが、結構楽しみつつ走りきり無事到着。

林道の駐車場からタウシュベツ川橋梁までの線路跡と思われる2〜300m程の道は車両通行禁止となっているが、バイクはOKらしい。資料館のおばちゃんも「バイクならすぐ近くまで行けますよ〜」と言っていたのを思い出し、そのまま入っていく・・・が、あと少しという所で流木に行く手を阻まれ、とりあえずUターンして向きを変えパシコをそこに置く(現在は車両乗り入れ禁止です)

ここに来ていたライダーは、私とKLXの方と三国峠パーキングで会ったZRX(多分1100)の方。KLXの方は橋のすぐ脇までバイクで進入していたが、ZRXの方はさすがに車用の駐車場にバイクを止めて歩いてきてました。

タウシュベツ川橋梁は、昭和30年に糠平ダムにより水没する事になった士幌線の線路が付け替えられると同時に使われなくなった橋。糠平湖の水位が上がると沈んでしまう「幻の橋」でもある。ダムの水位が上がり始める6月頃から沈み始め10月末には水面下に姿を消し、水位が下がり始める1月頃から再びその姿を現し始めるのだそう。

今は水位は低いものの徐々に上昇しつつあると言う段階で、幸いアーチ部分は見えるものの橋脚部分は水面の下という状態。一番水位の下がる5月頃行くと、その全容を見られるらしい。

タウシュベツ川橋梁は話には聞いていたが、こうして目の当たりにすると複雑な心境にならざるを得ない。

これらのアーチ橋は産業遺産でもある。北海道では自然と人々が築き上げてきた文化や産業や生活の痕跡を、北海道独自の視点と道民も参加して決めて遺産として残すと言う活動を行っていて、これらのアーチ橋も全てでは無いらしいが北海道の登録有形文化財に選定されており、保存活動も行われている。

NPOひがし大雪アーチ橋友の会HP → http://www3.ocn.ne.jp/~arch/

これらのアーチ橋は、まだ環境云々と騒ぐ事がほとんど無かった頃に周囲の景観や環境に配慮した設計がなされていて、技術的な価値も高く評価されていると言うのが選定理由でもある。

しかしタウシュベツ川橋梁に関しては、その場所からして保存対象から外れざるを得ない。事実、表面はボロボロに侵食され一部は鉄筋がむき出しになっていて、橋脚も冬季の凍結等でボロボロの状態だ。

・・・つまり、将来的に崩壊する運命にある橋である。今こうして崩壊前に見られた事は幸運だったのかもしれない。

タウシュベツ川橋梁に向かう道。

さすがにここから先は流木に阻まれてパシコでは行けませんでした。

※現在この道は二輪四輪問わず乗り入れ禁止です。
タウシュベツ川橋梁です。

ここは結構知られるようになったせいか、他にも車で来たカップルが2組。

橋の向こう側からも全体を見渡せるスポットがあるとの事。私は今回は行きませんでしたが。

目的を一通り済ませ、買出しも済ませてキャンプ場へ戻る。もし来年も北海道に来られたら、もっとじっくり時間をかけてアーチ橋&廃線探索してみたいなぁと考えるのでした。その時は事前に調査も必要になるだろうし、熊対策もしなきゃならないな・・・。

何はともあれ、今日はダート三昧のツーリングだったのでした(^_^;)

この日の夕食はSL230の龍之助さん、GSF1200のライダー氏と3人で宴会となりました。

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